インドと関わり始めてかれこれ4年になり、今はインド系企業に就職して働いているわけですが、インド人の働き方・物の考え方にはわれわれ日本人と明らかに違うところがいっぱいあります。

今回の記事では、謎のインド人について少しだけ分かったことを紹介したく思います。

 

ボスは絶対

“Yes, sir” “Han ji sir” “Bilkul sir”

左二つは「はい、ボス」。右は「全くその通りです、ボス」的な意味なのですが、インド人は日本人以上に、ボスに対してNoと言わないと思います。

ひどい人だと、ボスに叱られそうになるとすぐに部下のせいにしたりします。それに、ボスに叱られそうな場合や叱られた場合、言い訳のための資料作成のスピードと量は凄まじいです。普段の仕事でそのスピードを出してほしいです。

逆に、うかつに(下の)インド人を批判するととんでもない勢いで言い訳してきて申し訳ないというか正直面倒なことも多いです。

 

 

明確な序列と指揮系統と歯車式社会

上記にも関連しますが、インド人社会はカーストにも表れているように階級主義というか、序列がはっきりとしています。それゆえ、指揮系統もはっきりしています。

A→B→C→Dの順番に、A側が上位職(General Managerつまり部長とか)、D側が下位職(Assistantつまり平とか)とすると、Aにある仕事をお願いすると、そのタスクの難易度によって、難しい内容であればAがそのままその仕事をします。簡単な内容であれば、AからBに仕事が投げられます。以下同様に、いまこの仕事はBの手元にありますが、Bが「俺がやるまでもない」と判断すれば、この仕事はCへと投げられます。

このように、インドの会社ではまるで歯車の歯が一つ一つかみ合って周るかのごとく仕事が進むという特徴があります。もちろん、日本でも同じように簡単な仕事は下の職位に投げられるというのはよくあることだと思いますが、インドの場合には、このステップが日本よりもきっちりとしているように感じられます。

このステップの多さが、インド人の仕事のゆったり感の一つの原因になっています。くわえて、もしどこかのステップで誰かが放置してしまえば、そこで仕事は止まってしまいます。こういう事情もあり、インド人に仕事をお願いした場合には、各レベルの担当に対して定期的なリマインダをしないと、知らない間に仕事が止まっていることがよくあります。

 

 

フォーマルさを気にしない

この点は、インドの方が日本より効率的なのだと思いますが、インド人はフォーマルかどうかという感覚がかなり薄いように思います。

たとえば、会社のメールアドレスに、就職希望者からの応募メールが送られてくることがありますが、件名なし・本文なしで履歴書のPDFファイルのみ添付ということはザラにあります。しかも、そのPDFファイルが、応募先全社共用の履歴書をデジカメで撮影しただけというものもあったりします。

どうも、「用さえなせばそれでいい」という感覚のようなのです。

一方、日本では、形式を非常に重視します。日本で就職活動をする場合には、履歴書はそもそもメールではなく郵送で送ったり、手紙を書く場合には季節感を醸し出しつつ体調を聞き、活躍を祈ったりします。また、返送用封筒を同封する際には、自分の名前には様をつけない(それゆえ、相手に様と書く一手間を要求する)といった習慣もあります。

これらすべての日本の習慣は、ビジネス上無駄といってしまえば無駄なので、効率という面ではインドの感覚の方が優れているのだと思います。

 

 

「一事が万事」ではなく、「それはそれ。これはこれ。」

日本人は「一事が万事」、インド人は「それはそれ。これはこれ。」という考え方の特徴があります。

これは、上記の履歴書の送り方の感覚の違いの理由にもなっていると思います。日本人は、「すべては関連している」と考えがちなので、就活の履歴書の送り方から何から、すべて完璧でないと、「この人はだらしない」と見なしてしまうし、逆にそう見なされてしまうことを恐れています。

一方、インド人は、履歴書の送り方のフォーマルさと仕事の優秀さは関係ないと思っているようです。

これはほかの場面でもよく見られる特徴で、たとえば顧客に見積書や契約書を提出する際、インド人の作るファイル(特にエクセルファイル)はぐちゃぐちゃです。英語の綴りは間違いだらけ、ピリオドはあったりなかったり、フォントは各セルでバラバラ、中央揃えと左揃えが混在、一貫性のない太字、謎のスペース、謎の合体セル、謎の飛び出す罫線等々。

こんなものを日本で客先に提出すると、その時点でやる気または能力が無いと見なされます。インド人は、そういうディテールを、仕事本体とは切り離して見ているようで、それゆえあまり大事だと思っていないようです。これも、効率でいえばインドの方が優れているといえるかもしれません。

ただ、より大事なこととして、そもそも成果物をチェックするという習慣が乏しい人も多いようで、大事な数字が間違えていたり、大事な項目がごっそり抜けていたりということもたまにあります。人を見て対応しないといけないというのは、インド人も日本人も同じかもしれません。

 

 

数字を二つ言う

「いつまでに成果物を出せるか」とか、「いつ来れるか」と聞くと

“15 to 30 minutes!” (15分から30分)

と数字を二つ言います。

この場合、基本的に15分はエサ、30分が本体です。

30分が本体で、そこを基準にインド時間がスタートするので、だいたいこの場合成果物は早くて45分、平均2時間、遅いと(毎日リマインダして)2日~1週間後に出てくると想定しておく必要があります。

似た表現に、

“Maximum 30 minutes”(最大で30分)

という表現があります。これを解釈するには、まずmaximum(最大)をminimum(最小)に置き換える必要があります。したがってこの場合も、まずは45分を目安に想定しておく必要があります。

 

 

近視眼的

上記にも関連しますが、インド人は全体的に、あまり先のことを見通すのが得意ではないように感じます。

まず、予定を立てるのがとても苦手です。よく頑張って一週間、それ以上の予定はまず普通のインド人には立てられないと感じます。「予定が立てられない」というと、イメージは悪いですが、どうもインド人は不確実性を嫌うようなのです。

そもそも突発的な事件が多いインド。今から一週間経つまでに、何か突発的な事件が起きて、状況が変わってしまうことはよくあります。だとしたら、一週間後の予定なんて立てたって、どうせ状況が変わって役に立たなくなるのだから、意味がないだろう。そういう考えなのだと思います。発展途上国であることも関係しているのかもしれません。

日本は、成熟した国で、全てが予定調和のもと進んでいくので、そういう背景もあって計画を立てやすいのかもしれません。また、日本人は、仮に計画が変更になる可能性があったとしても、とりあえず現時点での計画を立てておいて、そこからの変更(改善)で対応する方が好きなように感じます。

一長一短ありますが、相手に合わせて対応の必要があることを日々感じています。